だて整形外科リハビリテーションクリニック

EULAR2024 in VIENNAに参加しました(1)

2024/06/20

みなさんこんにちは。

院長の伊達亮です。
先日開催された2024年6月12日(水)~2024年6月15日(土)にオーストリアのウィーンで開かれたヨーロッパのリウマチ学会(EULAR  European League Against Rheumatism)に参加してきました。
この学会は、アメリカリウマチ学会(ACR)と並んでリウマチ学では世界中でも最も規模の大きい学会の一つです。
リウマチ治療において頭を悩ませることの一つに、治療を変えても症状が改善しない患者さんがいることですが、2020年EULARが定義した「治療困難なRA」(D2T RA)という言葉があります。今回の学会では、特にD2Tに関するまとまった報告が多かった印象です。

学会中にM. Matsuda医師のポスター講演を拝見したので、私見も交えて紹介させていただきます。

POS0673

D2traと非D2traにおけるヤヌスキナーゼ阻害薬の有効性、安全性および薬剤残存率に関する比較観察研究

Background: 

  • Although the remission rate of RA has increased dramatically with the application of targeted therapies, such as biologic agents or Janus kinase inhibitors (JAKi) in combination with methotrexate.
  • D2TRA, defined as patients having active disease with failure of at least two biological or targeted synthetic disease modifying anti-rheumatic drugs (b/tsDMARDs) with different mechanisms of action, occurs in about 5-10% of RA patients.
  • The physical and economic burden on patients is significant, and effective treatment for D2TRA needs to be investigated.

背景

  • RAの寛解率は、生物学的製剤やヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKi)とメトトレキサートとの併用療法などの標的治療薬の適用により飛躍的に向上している
  • D2TRAは、異なる作用機序を有する少なくとも2種類の生物学的製剤または分子標的合成疾患修飾性抗リウマチ薬(b/tsDMARDs)が無効で、かつ活動性の疾患を有する患者と定義され、RA患者の約5〜10%にみられる。
  • D2TRAは患者の身体的・経済的負担が大きく、有効な治療法の検討が必要である。

方法

  • JAKiによる治療を受けたRA患者118人を対象に行われた。
  • D2TRA群(n=56)と非D2TRA群(n=62)に分け、12ヵ月間後ろ向きに観察した。

結果

  • 次の項目は2群間で差がなかった
    • JAKi開始時の年齢
    • 女性患者の割合
    • RA罹病期間
    • 圧痛関節数
    • 腫脹関節
    • C反応性蛋白(CRP)
    • 赤血球沈降速度(ESR)
    • DAS28
    • リウマトイド因子(RF)
    • 抗CCP抗体陽性率
    • 副腎皮質ステロイドの使用頻度
    • メトトレキサートの使用率
  • JAKiの使用歴のある患者はD2TRA群で39.3%、非D2TRA群で8.1%であった。
  • D2TRA群、非D2TRA群ともにDAS28-CRPはベースラインからJAKi治療開始12週後まで減少を示した。
  • DAS28-CRP中央値はD2TRA群で4.21から3.18(p=0.012)、非D2TRA群で3.95から2.17(p<0.001)に減少した。
  • 治療開始時および治療12週後の寛解および低疾患活動性患者の割合は、D2TRA群で10.7%から43.2%に、非D2TRA群で22.2%から60.6%に増加した。
  • D2TRA群で過去にJAKiによる治療が無効であった患者のうち、12週時点で寛解および低疾患活動性であった患者の割合は21.4%であった。
  • 12ヵ月間の薬剤生存率はD2TRA群と非D2TRA群で有意差はなかった(57.1%対59.7%)。
  • 有害事象によりJAKi療法を中止した患者はD2TRA群21%、非D2TRA群23%であったが、その差は有意ではなかった。
  • 効果不十分のため投与を中止した患者はD2TRA群で21%、非D2TRA群で18%であった。

結論

  • JAK阻害薬は非D2T関節リウマチでもD2T関節リウマチに有効かつ安全に使用できると考えられる。

当院でも、生物学的製剤を使用しても寛解に達しない患者さんが一定数おられます。

先日、発表された日本リウマチ学会ガイドライン2024では、JAKi製剤の適応はより慎重に行うよう指針が出されていますが、適応を慎重に見極めながら、D2TRA患者さんにも使用したいと考えています。

今回は、福岡空港→羽田空港→ミュンヘン空港→ウィーン空港と出発してからホテルに到着するまで25時間の長旅でした。

ロシアの上空封鎖の影響で、以前ヨーロッパに行ったときよりも2-3時間くらい飛行時間が長かったです。

ミュンヘンで、入国審査の待ち時間が長く、乗継便に乗り遅れるトラブルがありましたが、つたない英語力でなんとか振替便を手配することができました。

ウィーン空港に到着すると、空港→ウィーン市内を結ぶCATという特急の窓口に学会の受付があり学会参加証を受け取ることができました。

これがあれば、ウィーン市内までの乗車券の割引が効いたり、ウィーン市内の地下鉄やトラムが無料になるサービスがあり、会場ホテル間の移動や観光にとても便利でした。

文責 下関市 だて整形外科リハビリテーションクリニック 日本リウマチ学会 専門医 伊達亮