だて整形外科リハビリテーションクリニック

下関リウマチセミナー

2025/02/08

みなさん、こんにちは

だて整形外科リハビリテーションクリニックの院長、伊達亮です。

2025年2月7日行われた「下関リウマチセミナー」に参加しました。大阪大学の蛯名耕介先生が「関節リウマチによる関節破壊の仕組みとその対策」について講演されました。その中で特に重要だと感じたことを、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。

関節リウマチと関節の壊れ方

関節リウマチは、体の免疫システムが誤って自分の関節を攻撃してしまう病気です。炎症が続くと、軟骨や骨が破壊され、関節の変形や痛みが生じます。この炎症の主な原因の一つが「TNFα(ティーエヌエフアルファ)」という物質です。

TNFαは炎症を悪化させ、骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させることで、関節のダメージを加速させます。関節を守るためには、このTNFαの働きを抑えることが重要です。

TNFαを抑える薬とは?

TNFαは、炎症を引き起こす主要な物質の一つです。関節リウマチの患者さんでは、TNFαが過剰に作られ、関節の炎症や痛みが長く続きます。これを抑えるために使われるのが「TNFα阻害薬」です。TNFαの働きを抑えることで、関節のダメージを防ぎ、症状を和らげることができます。

TNFα阻害薬には、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどがあり、それぞれ異なる方法でTNFαの働きを抑制します。治療の選択は患者さんの状態に応じて決定されます。

インスリン抵抗性とは?

インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、インスリンが効きにくくなる状態を「インスリン抵抗性」といいます。最近の研究では、関節リウマチの患者さんはTNFαが増えることで、インスリンが効きにくくなり、血糖値が高くなりやすいことがわかってきました。

TNFαがインスリンに与える影響

TNFαがインスリンの働きを妨げ、血糖値が下がりにくくなる。

炎症が続くことで、筋肉や肝臓が糖をうまく利用できなくなる。

その結果、糖尿病のリスクが高まる。

TNFα阻害薬を使うことで、インスリンの働きが改善される可能性があるため、糖尿病を合併している関節リウマチ患者にとっては有効な選択肢となることがあります。

TNFα阻害薬と心臓病の関係

関節リウマチの患者さんは、健康な人に比べて心臓病(心血管疾患)のリスクが1.5~2倍高いと言われています。これは、体の中で炎症が長く続くことで、血管がダメージを受けてしまうためです。また、RA患者の死亡原因の約50%が心血管病変であることも報告されています。

TNFα阻害薬の心臓への影響

炎症の抑制:TNFαを抑えることで、血管の炎症が減り、動脈硬化が進みにくくなる。

血管の状態を改善:血管の細胞が健康になり、血流が良くなる。

コレステロールの改善:悪玉コレステロール(LDL)が減り、善玉コレステロール(HDL)が増える。

これらの研究結果から、TNFα阻害薬が関節リウマチの症状だけでなく、心血管リスクの低減にも役立つ可能性が示唆されています。

まとめ

関節リウマチの治療では、炎症を抑えることがとても重要です。そのために、TNFαの働きを抑える薬が使われています。この薬は、関節のダメージを防ぐだけでなく、血糖値や心臓の健康にも良い影響を与える可能性があります。

リウマチの治療を受けている方は、主治医と相談しながら、最適な治療を続けていきましょう。

当院の院長伊達亮は、日本リウマチ学会の専門医として診療を行っております。

これまでの経験を活かし、患者さん一人ひとりの症状や状況に合わせた治療を心がけています。リウマチ治療について不安や疑問がある方は、お気軽にご相談ください。皆さんの健康をサポートできるよう努めてまいります。