だて整形外科リハビリテーションクリニック

下関リウマチセミナー(5)

2025/03/03

みなさんこんにちは。だて整形外科リハビリテーションクリニック 伊達亮です。

2025/02/07、田辺三菱製薬が主催する「下関リウマチセミナー」に参加しました。大阪大学の蛯名耕介先生が「関節リウマチにおける骨関節破壊のしくみとその対策」についての講演を拝聴しました。その内容の中で、大切だと感じたことを分かりやすく説明したいと思います。

ステロイド骨粗鬆症と閉経後骨粗鬆症の違い

骨粗鬆症にはいくつかの種類がありますが、特にステロイド骨粗鬆症と閉経後骨粗鬆症には明確な違いがあります。それぞれの特徴を理解し、適切な対策を講じることが大切です。

閉経後骨粗鬆症とは?

閉経後骨粗鬆症は、女性が閉経を迎えることで女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、骨の代謝バランスが崩れることで起こります。

特徴

  • 加齢とともに発症しやすい。
  • 主に女性に多く見られる。
  • エストロゲンの低下によって骨吸収(骨が壊される)が進み、骨密度が低下する。
  • 骨梁構造の変化 横方向の骨梁(骨の網目構造)が減少する。
  • 全体的に骨がスカスカになり、骨折しやすくなる。

ステロイド骨粗鬆症とは?

ステロイド骨粗鬆症の発症には、Piezo1 という細胞膜に存在する機械刺激受容チャネルが関与している可能性が指摘されています。Piezo1は、骨細胞が機械的な刺激を感じて骨の形成を促すために重要な役割を果たします。しかし、ステロイドを長期間使用すると、Piezo1の働きが低下し、骨の形成が抑えられてしまいます。その結果、縦方向の骨梁が失われ、骨の強度が低下しやすくなるのです。

最近の研究では、Piezo1を活性化する薬剤(例:Yoda1)が、ステロイド骨粗鬆症の進行を抑える可能性が示唆されています。将来的には、Piezo1を標的とした新しい治療法が開発されることで、ステロイド骨粗鬆症の予防と治療がより効果的になることが期待されています。

ステロイド骨粗鬆症は、グルココルチコイド(GC)(ステロイド)を長期間使用することで発症します。関節リウマチや自己免疫疾患の治療でGCを使用する患者さんに多く見られます。

特徴

  • 年齢や性別に関係なく発症する。
  • ステロイドの使用量や期間が長いほどリスクが高まる。
  • 骨の形成が抑制され、骨の新陳代謝が遅くなる。
  • 骨梁構造の変化
  • 縦方向の骨梁が失われる。
  • 骨の強度が急激に低下し、骨折しやすくなる。
  • 椎体(背骨)が特に影響を受けやすく、圧迫骨折のリスクが高まる。

予防と対策

骨粗鬆症のリスクを減らすためには、以下の対策が重要です。

閉経後骨粗鬆症の対策

  • カルシウムとビタミンDの摂取:乳製品や魚、きのこ類を積極的に食べる。
  • ホルモン補充療法(HRT):エストロゲン補充による予防も考慮。
  • 適度な運動:ウォーキングや軽い筋トレを継続する。

ステロイド骨粗鬆症の対策

  • ステロイドの使用を必要最小限にする:長期間の使用は避ける。
  • 骨吸収抑制薬(ビスホスホネートなど)を使用する:医師と相談しながら適切な薬を選ぶ。
  • 適切な栄養管理と運動:特に体幹トレーニングを取り入れることで、圧迫骨折のリスクを軽減。

まとめ

閉経後骨粗鬆症とステロイド骨粗鬆症は、それぞれ異なる原因で発症しますが、共に骨折リスクを高める疾患です。特にステロイド骨粗鬆症では、縦方向の骨梁が失われるため、骨の強度が急激に低下します。適切な治療と予防を行うことで、健康な骨を維持し、骨折のリスクを減らすことができます。

当院では、患者さん一人ひとりの状態に応じた治療とリハビリを提供し、骨粗鬆症の予防・管理にも力を入れています。ご不安な方は、お気軽にご相談ください。

だて整形外科リハビリテーションクリニック 日本リウマチ学会専門医 だて整形外科リハビリテーションクリニック

引用文献:

  • Lijun Wang Nat Commun (IF: 14.92; Q1)2020 Jan 15;11(1):282. doi: 10.1038/s41467-019-14146-6. Mechanical sensing protein PIEZO1 regulates bone homeostasis via osteoblast-osteoclast crosstalk