みなさんこんにちは。だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長の伊達亮です。
2025年2月26日、第8回若松整形外科スポーツ関節鏡研究会に参加しました。本研究会では、仙腸関節障害に関連する腰殿部痛について最新の知見が共有されました。今回は、仙腸関節の役割や機能障害、診断法、治療について詳しく解説したいと思います。
① 仙腸関節障害とは?
- 仙腸関節は、腰部から下肢へ荷重を伝え、衝撃を吸収する重要な関節です。諸説ありますが、今回の発表では腰殿部痛の23.8%が仙腸関節由来と述べられていました。
② 仙腸関節障害の症状・診断
- One-Finger-Testが有用(患者さんに指1本で痛みの場所を指してもらう)
- 鼡径部痛を伴うケースが50%
- 下肢の痛みやしびれを伴うこともある(神経デルマトームと必ずしも一致しない)
- 椅子に座ることは困難だが、正座は可能
- 荷重時痛、脱力などの症状が出現することもある
③ 仙腸関節の解剖と機能
- 仙腸関節の動きは以下のような特徴を持ちます。
- 前後方向・ 回旋方向には自由度があるものの 垂直方向の動きは制限されやすい
- 後方靱帯には神経終末が豊富。
④仙腸関節障害の治療
- 仙腸関節障害の治療には保存療法が中心となります。
- 仙腸関節ブロック(当院では年間250件前後の超音波ガイド下の仙腸関節内注射を行っています)
- Swing石黒法(側臥位で健側の股関節を前後方にゆらす)
- 骨盤ベルトの装着
- 腹横筋や体幹トレーニング(RECOREなど)
⑥ 仙腸関節固定術の適応
保存療法でも改善しない場合、固定術が適応となるケースがあります。 ・ 適応となるケース(0.1%程度)
- 外傷による仙腸関節の不安定性
- 臼蓋形成不全が関与する場合
- 荷重が困難な症例 では、手術を行うことがあります。
仙腸関節固定術の特徴
- 荷重伝達を優先し、関節の緩衝機能を犠牲にするものの、満足度は90.1%と高く、多くの患者で坐位時間が改善する(5分→60分)
- 骨移植を併用することで、固定部位の安定性を高める。
- インプラントの除去は、症状を再発させるリスクがある
【最後に】仙腸関節障害は腰殿部痛の原因となる重要な疾患です。特に腰椎固定術後の患者さんに多く見られ、適切な診断と治療が必要です。当院では、仙腸関節内注射や経験豊富な理学療法士運動療法を中心に、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。お悩みの方はお気軽にご相談ください。
だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長 日本リハビリテーション学会 専門医 伊達亮