だて整形外科リハビリテーションクリニック

第37回日本臨床整形外科学会に参加しました(4)

2024/07/18

みなさんこんにちは。だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長の伊達亮です。

先日参加した日本臨床整形外科学会で印象に残った講演の報告です。

東京大学整形外科 斉藤啄先生による【骨粗鬆症の診断のピットフォール】という講演を拝聴しました。

骨粗鬆症の診断を行う前に除外すべき疾患1)副甲状腺機能亢進症2)骨Paget病 3)骨軟化症(腫瘍性含む) についてお話されました。

基本的なことや具体的な症例提示があり、非常に勉強になりました。

当院では骨粗鬆症診断の際に必ず採血を行い、骨粗鬆症の中に隠れている内分泌疾患を見つけるように工夫しています。

採血結果で注意する項目は

1)P1NP(骨形成:骨をつくる指標)

2)TRAP5b((骨吸収:骨を壊すの指標となる数値)

3)ビタミンD(主に25OHVitD3) カルシウムの吸収を促すビタミン

4)Ca(カルシウム)

5)P(リン)

6)eGFR(腎機能)

7)総タンパク

8)intact PTH

などです。

例えば、骨粗鬆症患者さんの多くは、

1)P1NP 正常からやや高値

2)TRAP5b 高値

3)25OHVitD3 低値

ような値を示します。骨をたくさんつくろうとしているけれども、それ以上に骨吸収が進んでしまい、骨粗鬆症になる状態です。(高回転型といいます)VitDの値も低下していることからカルシウムの吸収力が落ちています。

特に注意することが、腎機能です。eGFRが極端に低下していて、Caが高値のときに考える疾患の一つに【副甲状腺機能亢進症】があります。副甲状腺ホルモンは、骨からCaやPを溶出させ、血液中のCaやPが増加します。血管の石灰化などを引き起こすため、動脈硬化などさまざまな疾患のリスクが上がります。intactPTHを測定し、内分泌内科などへの紹介を行うこともあります。

骨Paget病は、骨の代謝回転に異常が生じる結果、骨形成と骨吸収が異常に増加し、皮質骨(骨の外側)が厚くなりますが、強度は低下します。 無症状のこともありますが、骨の痛み、骨の変形(特に大腿骨の湾曲)による痛みなどの症状がみられることもあります。

骨軟化症は類骨(石灰化していない骨器質)が増加する疾患です。骨基質の石灰化障害により、骨強度が低下し骨折や骨痛の原因となります。原因は、1)低リン血症、2)ビタミンD代謝物作用障害3)薬剤性など多岐にわたります。

慢性の低リン血症の病因は、ビタミンD代謝物作用障害、腎尿細管異常、FGF23亢進に大別されます。FGF23は腎臓からPの排出を促進させ、血中リン濃度を低下させるホルモンです。

治療は、ビタミンDの内服になります。

骨粗鬆症の診断にあたって、これらの疾患を見逃していないかより気をつけようと思いました。

文責 下関市 だて整形外科リハビリテーションクリニック 日本骨粗鬆症学会 認定医 伊達亮