だて整形外科リハビリテーションクリニック

EULAR2024 in VIENNAに参加しました(6)

2024/07/02

2024年6月12日から15日にオーストリアのウィーンで開催されたEULAR2024に参加しました。

イタリアのLarosa医師によるJAK阻害薬の継続率に関するコホート研究のポスター発表を拝見しました。

内容を一部私の解釈を加えて、述べてみます。

POS0604

JAKi’S SURVIVAL RATE AND PREDICTORS OF DISCONTINUATION IN A COHORT OF PATIENTS WITH RHEUMATOID ARTHRITIS

Background: After the publication of the ORAL Surveillance trial1, the European Medical Agency (EMA) recently recommended prescribing JAK inhibitors (JAKi) in patients with rheumatoid arthritis (RA) only after an adequate risk/benefit assessment. Indeed, according to EMA recommendations, patients ≥65 year-old, former or current smokers, at high risk of developing major cardiovascular events (MACEs), thromboembolic events or cancers should receive JAKi only when other treatments, such as TNF-inhibitors, are not appropriate. Unlike randomised controlled trials, real-world data seem to be reassuring promising and, in fact, the prescription rate of JAKi has dramatically risen in the last years.

背景 欧州医薬品庁(EMA)は2021年7月5日に医薬安全性監視リスク評価委員会(PRAC)はORALサーベイランス試験を発表し、JAK阻害薬(JAKi)の処方を、十分なリスク/ベネフィット評価の後にのみ行うよう推奨している。

 実際、EMAの勧告によれば、65歳以上の患者、元または現在喫煙者、主要心血管イベント(MACE)、血栓塞栓イベントまたは癌の発症リスクが高い患者は、TNF阻害薬などの他の治療が適切でない場合にのみJAKiを投与すべきである。

しかし、ランダム化比較試験とは異なり、実臨床データは有望であり、実際、JAKiの処方率はここ数年で劇的に上昇している。

Methods: This cohort was subdivided into two groups: “high risk patients” and “low risk” according to EMA recommendations. The first group included patients ≥65 year-old, past or current smokers and having at least one cardiovascular or neoplastic comorbidity.

EMAの勧告に従って「高リスク患者」と「低リスク患者」を分類した。 第1群は、65歳以上で、過去または現在の喫煙者であり、少なくとも1つの心血管疾患または腫瘍性合併症を有する患者を対象とした。

Results: A total of 693 patients were enrolled. 48 patients were excluded due to missing data. 372 (57.7%) patients received baricitinib, 135 (20.9%) tofacitinib, 86 (13.3%) upadacitinib and 52 (8.11%) filgotinib. 21 (3.2%). 141 (21.9%) patients discontinued JAKi after a median time of 366 days (IQR 155-914). “High-risk patients according to EMA” were the majority of our cohort (n=384, 59.5%) vs 261 “low-risk patients” (40.5%).

合計693人の患者が登録された。 48例はデータ欠損のため除外された。 372例(57.7%)にバリシチニブ(商品名 オルミエント)、135例(20.9%)にトファシチニブ(商品名 ゼルヤンツ)、86例(13.3%)にウパダシチニブ(商品名 リンヴォック)、52例(8.11%)にフィルゴチニブ(商品名 ジセレカ)が投与された。 

投与中止の理由は、一次無効(n=48、7.4%)、二次無効(n=25、3.9%)、感染症(n=8、1.2%)、肺塞栓症/深部静脈血栓症(n=6、0.9%)、がん(n=5、0.8%)、死亡(n=2、0.3%)、その他の原因(n=21、3.3%)であり、寛解状態の患者1人を含む。 VZV感染(帯状疱疹)により3人の患者のJAKi中止を決定し、肺塞栓症/深部静脈血栓症が6人(すべてバリシチニブ治療)であったことである。 多変量ステップワイズCox解析では、中止の予測因子は、プレドニゾン投与量(ハザード比-1.1、95%信頼区間-1.05-1.17)、選択的JAKiの使用(HR 4.1、95%信頼区間-1.80-9.10)、RF/ACPAの非存在(HR 0.46、95%信頼区間-0.26-0.83)であった。 最後に、EMAに従って「高リスク」に分類されたことは、JAKIの中止とは統計学的に関連しなかった(HR 1.96、95%CI 0.96-4-01)。

Conclusion: Our study shows that only a minority of patients discontinued JAKi (21.9%). Notably, among discontinuation‘s causes, no MACE’s were found. Being classified at “high-risk” according to EMA was not associated with JAKi’s discontinuation. Conversely, higher prednisone dosages, treatment with selective JAKi and absence of RF/ACPA were predictors of JAKi’s withdrawal.

結論 本研究の結果、JAKiを中止した患者は21.9%と少数派であった。 注目すべきは、治療中止の原因の中でMACEは認められなかったことである。 EMAにより「高リスク」に分類されたことは、JAKiの中止とは関連しなかった。 逆に、プレドニゾンの高用量、選択的JAKiによる治療、RF/ACPAの非存在はJAKi離脱の予測因子であった。

ポスターを拝見する前は、MACEの発生頻度はもう少し高いのではないかと考えていました。
JAK阻害薬の副作用に心血管イベント、悪性腫瘍の発生リスク、帯状疱疹の発生などが挙げられます。
生物学的製剤での治療がうまくいかなかった場合のセカンド・ラインとして、JAK阻害薬は選択肢として上がりますが、副作用の発生リスクを十分に勘案して使用する必要があります。

文責 下関市 だて整形外科リハビリテーションクリニック 日本リウマチ学会専門医 院長 伊達亮