仙骨硬膜外ブロックについて
- 硬膜外ブロックとはどのような治療ですか?
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神経の束は脊髄(せきずい)と呼ばれ、脊髄を包んでいる膜が硬膜(こうまく)です。その外に硬膜外腔(こうまくがいくう)と呼ばれる隙間があります。ここに腰から足へと向かう神経が通っています。
硬膜外腔に局所麻酔薬を注入すると、痛みを感じる神経に麻酔がかかり、痛みが和らぎます。神経の働きを遮断する治療であることからブロック注射と呼ばれます。
- ブロック注射は一時的な効果しかないのでしょうか?
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痛みが強いときや長引く痛みを感じている部位は、血流が悪くなります。硬膜外ブロックを行うと、痛みを感じる神経をブロックする即時効果に加えて、自律神経にも作用するため、血流が改善し、発痛物質も流され、持続した効果も期待できます。
- 効果には個人差や症状によって違いがあります。
- しびれは改善しないケースが多いです。
- どのような病気に対して行われるのでしょうか?
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下記のような腰椎疾患に対して行います。
- 硬膜外ブロックの合併症は?
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- 当クリニックでは2017年9月以来、年間450~500件の仙骨硬膜外ブロックを行っていますが、重篤な局所麻酔中毒や感染、硬膜外出血の合併症は0です。
神経根ブロックについて
- 神経根ブロックとはどのような治療法ですか?
- 脳から背骨の中を縦につながって通っている神経の束を脊髄(せきずい)といい、この脊髄を包んでいる膜を硬膜(こうまく)といいます。
その外に硬膜外腔(こうまくがいくう)と呼ばれる隙間があり、手足へと向かう神経の枝があり、その根元を神経根といいます。神経根ブロックを行うと、痛みを脳に伝達する神経の働きが遮断され痛みが軽快します。(この神経の働きを遮断する治療のことをブロックといいます)。
- どのような病気に対して行われるのでしょうか?
- 主に腰椎椎間板ヘルニアに対して行います。
- なぜ行われるのでしょうか?
- 医師は診察所見や画像(MRI)などから、患者さんの痛みの場所を推察します。例えば腰の5番目の神経に原因があると考え、5番目の神経にブロック注射を行い、痛みが軽快すれば、診断も治療もできるというダブルのメリットがあります。仮にまったく痛みが変わらなければ、もう一つ上もしくは下にブロックすることで、治療・診断に繋がります。
- どれくらい効果が持続しますか?
- 効果は、それぞれの病態で異なります。1回のブロック注射で、軽快する方もいれば短時間で効果が切れる方などまちまちです。持続時間の分岐点は、当クリニックでは24時間としています。
24時間以上ブロックの効果があれば、ブロックの効果が期待できることが多いため、数回神経根ブロックを行うことを勧めています。一方、24時間以内に痛みが元に戻ってしまった方では、神経根ブロックの効果はあまり期待できません。
- どこから注射の針を刺しますか?使用する薬剤は?
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うつぶせになり、腰から針を刺入します。透視装置を使用し、神経根まで針を誘導し、注射(局所麻酔剤・ステロイド)を行います。
- 腰椎の5番目の神経根(L5神経根)に注射するイメージ
- どれくらい時間がかかりますか?
- 神経根ブロックそのものは数分で済みますが、ブロック後は足に力が入りにくいため、30分程度安静にしていただき、力が入ることを確認して帰宅していただきます。力が入りにくいのは局所麻酔薬によって神経根に麻酔がかかったためですので、通常30分程度で回復します。
- 神経根ブロック後に気を付けることはありますか?
- 感染予防のため、神経根ブロックを受けた当日は入浴しないで下さい。翌日以降、刺入部位が痛い、熱が出る場合は至急当クリニックにご連絡いただくか、受診して下さるようお願いいたします。また、ブロック前後の痛みの比較を次回受診時に教えていただけると診断・治療に非常に役立ちます。
- 神経根ブロックの合併症は?
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一時的な足の脱力
神経根ブロックそのものは数分で済みますが、ブロック後は足に力が入りにくいため、30分程度安静にし、力が入ることを確認して帰宅していただきます。局所麻酔薬によって神経根に麻酔がかかったためですので、通常30分程度で回復します。
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一時的な血圧低下
自律神経(血管を縮める作用など)にもブロックがかかるため、疼痛は軽快しますが、血管が広がってしまって血圧が下がることがあります。低血圧は一時的なもので、時間が経てば元に戻ることが多いですが、血圧を上げる薬を使用することもあります。
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局所麻酔薬による中毒
- 口の周りや舌のしびれ感
- めまい、頭がくらくらする
- 耳鳴り
- 目がくらむ、かすんで見える
- 手足の筋肉がピクピクけいれんする
酸素吸入と点滴を使用し、局所麻酔薬が体から排泄されるまで経過を慎重に観察しますが、改善を認めない場合は、救急搬送をすることもあります。
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細菌感染
針を刺した部分から細菌が入り、化膿することがあります。以下のような症状があった場合は、お知らせください。
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神経根刺激症状
ブロックした後に足の痛みがかえって強くなる場合があります。神経根への針の刺入が炎症をひどくしたことが考えられます。他のブロック治療や内服薬、坐薬などで対応できます。遠慮なくご連絡・受診ください。
トリガーポイント注射
- トリガーポイントとは?
- 長引く頭痛、肩こり、腰痛など、慢性の痛みの原因として、筋肉(特に筋膜)が固くなってのびないことが大きな要因となっています。伸びなくなった筋膜は、周囲の組織と癒着し、動きの制限の原因となる場合もあります。その部位を押さえると固くて、圧痛を生じます。
それがトリガーポイントです。
- 症状は?
- 基本的にはある一点の痛みが主ですが、痛みの原因となった筋肉は動きが悪くなるため、他の筋肉にも負担がかかり、痛みの範囲が広がることがあります。全身の痛みを訴える方も時々いらっしゃいます。
- どんな注射ですか?
- 痛くて縮んだまま伸びなくなった筋肉(筋肉がロックした状態)に対する治療で、医師が抑えて痛みを感じる場所や硬結点に注射をします。1か所だけ行う場合、圧痛点の数に応じて4~6ケ所行う場合もあります。
- 効果は?
- 注射後に首が回るようになったり、肩が上がるようになったり、腰が曲げられるようになったりと、伸びなかった筋肉が伸びることによる効果が得られ、同時に痛みも軽快します。
効果には個人差があり、急性発症の痛みでは速やかに除痛効果が得られる場合も多くみられます。慢性の痛みでは、複数回の注射と内服、リハビリ治療、自宅でのストレッチなどを組み合わせて、こわばった筋肉を正常な状態に戻していくことが必要です。
- 注射は痛いですか?副作用は?
- 注射はできるだけ細い針を使用しますので、打ったときチクッとします。薬液を入れていくときに重い感じがすることもありますが、すごく痛いというわけではありません。
注射による内出血がみられることがあるため、注射当日の入浴は短時間にとどめたほうがよいでしょう。内出血は数日間で消退します。